女性泌尿器科とは
泌尿器科と同様に尿路(腎臓、尿管、膀胱、尿道)でみられる異常や病気を中心に女性泌尿器科も診療いたします。担当するのは、日本泌尿器科学会が認定する泌尿器科専門医である当院長です。 女性と男性では、性器の構造や体のしくみが異なりますので、女性に起きやすい泌尿器疾患があります。例えば女性は男性と比較すると尿道が短いので、細菌が逆流していく形で侵入しやすく、膀胱などに炎症が起きやすくなります。そのため膀胱炎に罹患しやすいという特徴があります。 また骨盤底筋群と呼ばれる筋肉群があるのですが、これは骨盤内の臓器(子宮、膀胱、直腸 等)を支えるほか、尿道をしっかり閉じることで尿漏れを防ぐという働きがあるのですが、加齢や出産の影響でこの筋肉群が弱まるなどすると臓器が体外に飛び出す、お腹に力を入れるだけで尿が漏れやすくなるということもあります。 これらデリケートゾーンで起きる泌尿器疾患は、恥ずかしさもあって受診を躊躇するという気持ちになる方もいるかもしれません。ただいたずらに時間を経過させるだけでは、症状を悪化させるだけです。お悩みは尽きないと思いますが、どうか勇気をもってお早めに当院をご来院ください。
女性患者さまがよく訴えられる主な泌尿器症状(例)
- 尿漏れ
- 頻尿(おしっこが近い、回数が多い)
- 夜間頻尿(尿意で何度も目覚める)
- 残尿感がある
- 血尿(尿に血が混じっている)
- 腟の外に丸いものがよく脱出する
- 足がむくんでいる
- 腰背部に痛みがある
- 腎臓の周辺に痛みを感じる
- 膿が尿道から出ている
- 血尿やたんぱく尿であることを健診の結果等で指摘を受けた
- 尿路(腎臓、尿管、膀胱)から結石が見つかった
- 慢性骨盤痛症候群(明らかな原因が無いのに、下腹部痛がある)が疑われる
女性泌尿器科でよくみられる疾患
膀胱炎
尿路感染症のひとつで、主に膀胱で発症した細菌感染症のことを総称して膀胱炎と言います。膀胱炎は、炎症の経過によって急性もしくは慢性、基礎疾患の有無によって単純性(基礎疾患がない)と複雑性(基礎疾患がある)に分けられます。なお一般的に膀胱炎とは、急性単純性膀胱炎のことを言います。以下、急性単純性膀胱炎を説明します。
膀胱炎の原因の大半である細菌の8割以上は大腸菌の感染と言われています。ちなみに同疾患の患者さまに若い女性が多いです。その理由としては、女性の尿道が構造的に短い、性行為によって細菌が尿道に入り込んでしまう等が挙げられます。ただそのほかにも、寒冷による刺激、ストレス、疲労などがきっかけになることもあります。
主な症状は、頻尿、排尿時の痛み、尿が濁っている(尿混濁:膿などが混じる)といった膀胱症状のほか、血尿、残尿感、下腹部痛などがみられることもあります。
診断をつける際の検査ですが、尿を採取(尿検査)し、尿中に含まれる白血球の数や細菌の有無を調べるなどして判明するようになります。
過活動膀胱
同疾患は性別に関わらず、40歳以上の男女であれば8人に1人の割合で(過活動膀胱の)症状がみられると言われています。高齢になればなるほど有病率は高くなっていきます。
主に膀胱は脳からの指令によってコントロールされているわけですが、その神経経路が何らかの障害を受けることで発症する神経因性過活動膀胱のケースがあるほか、神経経路の障害とは関係なく発症する非神経因性過活動膀胱もあります。前者では、脳血管障害(脳梗塞 等)、パーキンソン病、脊髄損傷などの疾患によって引き起こされます。後者では、加齢、前立腺肥大症(男性の場合)、閉経や骨盤臓器脱(女性の場合)などがきっかけになります。
よくみられる症状は、突然起きるとされる尿意切迫感です。それに伴って、頻尿や夜間頻尿、切迫性尿失禁(尿意を我慢できずに漏らしてしまう)が起きるようになります。
患者さまの訴えなどから過活動膀胱が考えられるのであれば、問診(過活動膀胱症状質問票を使う)をはじめ、尿検査(細菌の有無や血尿などを調べる)、腹部超音波検査(膀胱内の残尿量などを調べる)、排尿日誌をつけるなどしていきます。
腹圧性尿失禁
女性に起きやすいとされる尿失禁です。これは、腹圧が上昇する際(お腹に力を入れている状態。具体的には、咳・くしゃみをする、重い荷物を持ち上げる 等)、尿道がうまく閉鎖することができないために尿が漏れてしまうことを言います。
発症の原因に関してですが、排尿を抑制する働きがある外尿道括約筋(骨盤底筋群の一部)などが、加齢や出産、体重の増加などによって緩む(脆弱化する)、あるいは尿道そのものの閉鎖機能の低下によって起きると言われています。男性の患者さまにみられる場合は、前立腺手術の影響によるものか、外傷の場合が大半です。
なお女性に起きやすい原因としては、骨盤底筋の筋力がもともと弱いということがあります。ちなみに同疾患の患者さまの約3割程度の方に切迫性尿失禁も併せてみられるようになるとも言われています。なおこの症状によって、自らに行動制限をかけるなどして、著しくQOL(生活の質)を下げてしまう患者さまも少なくありません。腹圧性尿失禁は、決して珍しい病気ではありませんので、気づいたらお早めに当診療科を受診されるようにしてください。
診断をつける際の検査としては、尿検査、腹部超音波検査をはじめ、パッドを付けて運動をし、尿がどの程度漏れているかを調べるパッドテストも行います。また排尿日誌(排尿記録や尿失禁などを記録する)をつける、尿流動態検査をするなどします。
ちなみに骨盤底筋は鍛えることで弱まった筋肉を強化することができます。そのための体操(骨盤底筋群訓練)をすることで、軽度の腹圧性尿失禁であれば、治療効果は十分期待できるようになります。
骨盤臓器脱
骨盤外にまで、膀胱、子宮、直腸、小腸、膣壁などが脱出している状態を総称して骨盤臓器脱と言います。さらに脱出している臓器から、子宮脱、膀胱瘤、直腸瘤、小腸瘤、膣脱と診断されます。
発症の原因としては、上記のような骨盤内の臓器を支える靱帯や筋膜が出産を繰り返すことで損傷を受ける、加齢などによって緩むといったことが挙げられます。また腹圧がかかりやすいとされる、咳や便秘を慢性的に繰り返す、重い荷物を持つことが多い、肥満の方も同疾患になりやすいので要注意です。これらによって、直腸や膀胱、子宮が膣の方へと下がっていき、さらに進行すると膣壁ごと体外へと脱出するようになります。
よくみられる症状ですが、下腹部や性器の違和感、頻尿、尿失禁、尿意はあるものの排尿できない(尿閉)、膣粘膜に出血などがみられます。
患者さまの訴えなどから骨盤臓器脱が疑われ、内診や視診で医師が子宮等の下垂や脱出を確認できれば、その時点で診断はつけられます。
間質性膀胱炎
細菌感染が原因の膀胱炎(急性単純性膀胱炎)や過活動膀胱と同様の症状がみられますが、これらとは違う病気です。尿そのものに異常はみられません。主な症状は、頻尿です。トイレに行ってもすぐにまた尿意を催すようになります。また膀胱に尿が溜まると下腹部に痛みがみられるのも特徴です。女性に多く見受けられます。
原因は不明とされ、過活動膀胱で使用する抗コリン薬を使用しても症状が治まることはありません。発症メカニズムとしては、膀胱粘膜を保護するとされるバリア機能が何らかの障害を受け、それによって同粘膜が尿成分の刺激を受けるなどして上記のような症状が現れると言われています。
診断をつけるための検査としては、尿を採取して、細菌の有無や白血球の数を調べます。それでも診断がつけられなければ、超音波検査や膀胱鏡検査をして膀胱内部を観察するなどしていきます。